C【第4回】日本のピンク:梅

Written by KFS on . Posted in 色とリサーチ&マーケティング


今年は、桜が遅いですが、先日、梅を見に、茨城県の偕楽園に行ってきました。

ということで、今回は、日本のピンク、梅を中心に、梅、桃、桜について。

満開の梅の写真、遠景図です。
私には、この景色が、なんだが、東山魁夷の吉野の桜の絵のように見えました。
ただし、桜と梅では、花の付き方が違うため、なんとなく、梅のほうが寂しい感じ。
霞のように、煙った景色に見えます。

 

梅の美しさは、個人的には、枝ぶりの美しさにあると思っています。
だから、梅がたくさん植えてあると、つい、「この密集しているところ、いらないでしょ・・・!何本か抜きたい、空間が欲しい・・」なんて思ってしまう。もちろん、好みの問題ですが・・。

そういう意味で、梅といえば、真っ先に尾形光琳の紅白梅図が思い浮かびます。
なんといっても、「光琳梅」という意匠は、和菓子でも、パッケージデザインでも、気づかないだけで、現在でも多く残っているのではないでしょうか?

でも、個人的には、酒井抱一の紅白梅図のほうが、好き。

酒井抱一 紅白梅図屏風

白梅、紅梅の対比はもちろんですが、空間の取り方と、枝ぶりの対比。
そしてそれを引き立てる銀地・・。

銀地は、月の光を示すといわれますが、残り雪のようでもあり、別名、春告草(はるつげぐさ)と呼ばれる梅の凛とした美しさと、この時期の季節感が際立っているように思います。

 

花見といえば、今は桜が中心ですが、飛鳥・奈良時代の“はな”といえば、中国から伝来してきた梅。

一方、桃を愛するのは、中国の文化ですね。
桃は、中国では仙人の木・聖なる果物(仙果)と呼ばれ、邪気を祓い不老長寿を与える植物として親しまれてきました。
よく、中華料理の点心に、桃の実をかたどった甘い桃饅頭が出ますが、これも本来、桃=長寿を示す吉祥図案から来ているもの。
おめでたさ満点です。

日本においても中国と同様、古くから桃には邪気を祓う力があると信じられており、3月3日の節句の際に桃を飾るのも、元をたどれば、このあたりから来ているのかもしれません。

そういえば、桃のジュース?「ネクター」がありますが、本来、ネクター、ネクタルは、ギリシャ神話で「神々の聖なる飲み物、不老長寿の元」 という意味。
中国式の伝統の桃=不老長寿と、ギリシャ神話の不老長寿を示す言葉が偶然かどうかは知りませんが重なっているなんて、面白いですよね。

 

ただ、日本では、桃よりも、桜が愛されるようになっているところが文化の違いなのでしょうか?

桃を愛する文化が中国から伝わり、それが日本に根付いてもおかしくないのに、“はな”といえば、桜をさすようになったのは、平安中期くらいだそうです。

色の意味から読み解くと、ピンクの中でも、桜のような、パステル調や白の分量が多いピンクの意味は、柔和で上品、「優しさ」を伝える色です。

一方、彩度が濃く、赤みの強いピンクは、とても華やかな印象。
より、赤のメッセージが強く、ピンクが持つ女性性や若さを引き立てる&引き出す色と言われています。

日本人の好みは、桃のピンクの華やかさよりも、桜ピンクの柔和さだったのでしょうか?


<日本のピンク>

  • ◆◆◆紅梅色(こうばいいろ)
    梅の花の色からきた色の和名
    一般には紅梅の花のような色をさすが、紫がかった紅色をいうこともある

 

  • ◆◆◆桃色(ももいろ)
    淡い赤みのある淡紅色
    実際の桃の花よりも少し鮮やかな色を指す

 

  • ◆◆◆桜色(さくらいろ)
    桜の花の色からきた色の和名
    淡いピンク系統の色

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KFS

マーケティングリサーチ・調査ソリューションの専門会社、株式会社KFS(ケイ・エフ・エス)。 創造性は顧客を深く知ることから始まる。 市場・ターゲット可視化、インサイト理解のためのインタビュー調査など。 定量調査と定性調査を組み合わせた統合型ハイブリット調査による市場理解~受容度検証、価値創造ソリューション。