【第3回】Fact&Stick:定量調査と定性を組み合わせた ハイブリット調査の薦め(調査手法)
記憶に粘る事実を示す
”数字”で納得させて、”ストーリー”で腹落ち感を高める
”数字”で納得させて、”ストーリー”で腹落ち感を高める
ロジカルシンキングで重要な考え方は、「Fact(事実・ファクト)」です。
つまり、主観ではなく、誰が見ても納得できる客観的な事実であること。
調査には、大きく、「定量調査」と「定性調査」の2つがありますが、ロジカルシンキングの考え方と相性の良いのは、定量調査。
「誰々さんの意見や感想」といった定性データよりも、数字で示せる定量データで根拠を示すほうが、皆と同じ土俵で考えることが可能になります。
特に調査を問題点の指摘や今後の改善に活かしたい場合は、定量調査の出番といっても良いのではないでしょうか?
主観的な情報に頼れば、会議において議論が行き詰ってしまいますし、主観的な意見に基づく問題点の指摘合戦になってしまえば、本来、改善策を打ち出し、POSITIVEに取り組むことを議論する場が、感情的なしこりを生んでしまうことにもなりかねません。
「今回の新商品は、失敗でした。おそらく、XXとYYが原因だと思います」といった意見よりも、
「今回の新商品については、顧客満足度の視点から問題があると言わざるを得ません。
なぜなら、今回実施した新商品ABCの顧客満足度調査では、総合満足度における満足の回答率が43%であり、リニューアル前の従来商品・サービスと比較して、同比率が10ポイントダウンしています。
その理由は、XXとYYです。
なぜなら、項目別満足度において、XXの満足度比率は8%、YYの同比率は、3%と1ケタであり、—-」
といったほうが、「客観的な事実」として皆に伝わります。
そもそも、定量調査と定性調査は、
文字のごとく、
定量調査: 「量」的な情報 (数字、○○%、○○人、など)
定性調査: 「質」的な情報 (言葉、○○について○○のように思う、など)
の違いです。
もう少し詳しく説明すると、以下になります。
定量調査とは:
概要
- 多くの回答者に、同一の質問内容で、あらかじめ選択肢化された回答形式のアンケート調査を行い、データを数値化して分析する手法。
主な調査手法
- インターネットリサーチ、郵送調査、など。選択肢方式のアンケート全般
メリット
- 数値化された情報が元になるため、全体の構造や傾向が把握しやすい
- 客観的な事実を示すため、統計的な説得力がある
- ネットリサーチなど、安価に情報収集ができる
デメリット
- 質問項目への依存度が高く、質問項目以外の内容(質問しなかった内容、選択肢化されていない回答)は聴き出すことができない。
- 調査対象者の出現率が低いと、実査の難易度が増す
定性調査とは:
概要
- 対面形式のインタビューなど、直接被験者と話し、言語情報を中心に収集して分析する調査手法。
- 予め決めていたインタビューフロー以外にも、その場での意見や対象者の反応によって、回答を掘り下げたり(プローブ=なぜ?と、掘り下げる)、質問の仕方や、質問内容までも変更していくことができる。
主な調査手法
- フォーカスグループインタビュー、セミデプスインタビュー、訪問調査、など
メリット
- 個人の意見の細かいニュアンスに加えて、回答者の反応、行動まで言語以外の情報を入手することができ、ユーザーの理解が深まる
- 当初、想定していなかった質問内容でも臨機応変に変更することが出来るため、想定外のユーザーの意見や、ユーザー心理を導き出すことができる
- 深層心理の情報を把握しやすい
- 一人ひとりの属性と言葉が具体的に(対面式調査の場合には、映像的に)結びつくため、情報としてのインパクト(印象への残り方)が高い
デメリット
- 1回答者あたりの費用が定量調査に比べて高額
- 意見に偏りがでる場合がある
- 費用的、時間的に統計的に信頼できるだけの対象者数を集めることが難しく、調査結果の信頼性が問われる
定量調査、定性調査ともに、それぞれ一長一短があります。
ロジカルシンキングとの相性の良い定量調査は、「Fact(事実・ファクト)」を示すのに非常に有効ですが、
定性調査の1番の良い点は、一人ひとりの回答者とじっくり向き合うことで、具体的な顔を持った人としてターゲットや商品・サービスの活用シーンなどがイメージとして像を結ぶということです。つまり、「Stick=記憶に粘る感覚」です。
だからこそ、「Fact&Stick」=数字を深い意味で理解し、記憶に粘る事実を示す=ためには、定量調査と定性調査を組み合わせて調査設計を考えることが必要になってくるのではないでしょうか?
例えば、先ほどの例で考えると、
「今回の新商品については、顧客満足度の視点から問題があると言わざるを得ません。
なぜなら、今回実施した新商品ABCの顧客満足度調査では、総合満足度における満足の回答率が43%であり、リニューアル前の従来商品・サービスと比較して、同比率が10ポイントダウンしています。
その理由は、XXとYYです。
なぜなら、項目別満足度において、XXの満足度比率は8%、YYの同比率は、3%と1ケタであり、—-」
に続けて、
「では、具体的にXXとYYのどこが問題なのか、いくつか、ユーザーの生の声をインタビュー調査の結果から紹介したいと思います。まず、XXについては、—–」と紹介することです。
これによって、現在の問題点は、XXとYYであるということ以上に、そのXXとYYについて、どこが問題点の具体的な内容なのか、数字が具体的なストーリーを持ち始めます。
数字だけでは関心を示さなかった人も、リアルなお客様の声には、関心を持つ場合が多々あります。
このような、定量調査と定性調査を組み合わせて実施することを、「ハイブリット調査」と呼んでいます。
実施方法としては、
- STEP1.「定量調査」→STEP2.「定性調査」
「定量調査」で課題となった箇所にフォーカスするために、次のステップとして、「定性調査」で実態を掘り下げる - STEP1.「定性調査」→STEP2.「定量調査」
「定性調査」で浮き彫りとなったユーザーの意見をもとに判断をしてよいか、定性情報で得た情報は、一部の人の意見なのか、該当する属性の共通した意見なのか、情報の信頼性をを統計的に裏付けるための調査をする
など、組み合わせ方法は目的によって異なります。
まとめ:「Fact&Stick」
ロジカルシンキングとの相性の良い定量調査で事実と裏付けを示す、「Fact(事実・ファクト)」
一人ひとりの回答者とじっくり向き合うことで、具体的な顔を持った人としてターゲットや商品・サービスの活用シーンなどがイメージとして像を結ぶ、「記憶に粘る、腹落ち感=Stick」
この両方の組み合わせや使い分けをどう考えるか、
調査設計の段階で、調査手法を検討する際に、考慮しておきたいポイントです。
リサーチとロジカル&ラテラルシンキング・コンテンツ
はじめに:リサーチと思考法
【第1回】So What?/Why So?(調査目的の明確化)
【第2回】調査設計とロジカルシンキング
【第3回】Fact&Stick:定量調査と定性を組み合わせた ハイブリット調査の薦め(調査手法)
【第4回】みんなって誰?-代表性(調査対象者の選定)
【第5回】定量的な裏づけ-標本数:サンプルサイズ(標本数)の考え方について