生活者可視化調査 (ターゲット可視化調査)
見えにくいから“見える化”する (因子分析&クラスター分析)
生活者可視化調査とは
概要
生活者は見えにくい。
いくら、性別や年齢別で細かく分析してみても、どうもよくわからない。
「生活者可視化調査」とは、そんなお悩みを抱える方向けに、あなたが相手にする市場の生活者を見える化(可視化)するための調査です。
KFSで行う「生活者可視化調査」とは、
”市場のお客様”といっても、一括りにすることは難しい中で、
- 市場には、どういった価値観を持つ生活者がいて、
- いくつのタイプの”まとまり≒房/クラスター”に分類することができ、
- それぞれ、どの程度のボリュームを占めるか?
そして、各クラスターの生活者が、
- どのような属性で、どういう価値基準を持ち、どのような行動を取ることが推測されるのか、
各クラスターのプロファイルを明らかにしていく調査です。
市場における生活者の見える化/全体図を俯瞰するとともに、各クラスターのプロファイルを明確化することで、ターゲット戦略を考える上での資料として有用です。
たとえば、調査結果で明らかになった、「クラスター2:●●タイプ」をメインターゲットとして検討する場合、この「”まとまり”に属する人(≒クラスター)」は、
- どのような顔(性別、年齢、住んでいるエリア特性、etc.)を持つ人で、
(ターゲット属性モデル) - 市場にどの程度、存在し、
(ターゲットとした場合のクラスターの市場出現率の目安。市場でレアな顧客群なのか、ある程度の市場ボリュームが見込めるのかの判断基準) - このタイプの生活者が製品&サービスを選ぶ際の基本的な価値観・求めること
(製品やサービスに求める”軸(≒因子)”。特にどの”軸”を重視する傾向が強いか、弱いか、など。製品&サービス開発をする上でのヒント)
を明らかにしていくことが可能です。
調査手法としては、因子分析やクラスター分析、ペルソナ手法を使います。
生活者可視化調査とは-1).生活者を“価値観”から定義する
生活者の価値観に基づくセグメンテーション。
あなたが相手にしているのは、人間だ。
価値観にフォーカスするということは、“人”にフォーカスするということと同じ意味。
- 生まれたばかりの赤ちゃんが、最も関心を示すのは人の顔。
社会集団生活を余儀なくされてきた人間は、ヒトへの関心の高さが初期設定です。 - 人を人たらしめているのは、その人の価値観や考え方。
だからこそ、“人”が浮かび上がる情報は、私たちが何かを考える上での脳内スイッチを活発化させるのに役立つはずです。
マーケット・セグメンテーションには色々な方法があります。
代表的なのは、フィリップ・コトラーの市場セグメンテーション理論でしょうか?
ターゲットを考える時の4つの変数として、以下が挙げられています。
- 1.人口動態変数:デモグラフィック
性別、年齢、家族構成、職業などの人口統計的な分け方で、事実関係を示すもの。 - 2.地理的変数:ジオグラフィック
住んでいる地域や働いている地域、郊外・都市といったエリア特性、寒冷地・温暖地といった気候なども含む地理的特性。 - 3.心理学的変数:サイコグラフィック
生活者の心理に基づく、心理学的な特性。
具体的には、パーソナリティ、性格、個性、価値観、好みといった人間心理に基づくもの。 - 4.行動・態度変数:ビヘイヴィア
行動、態度に関するもの。
例えば、購買経験の有無(利用客・未利用客)や、利用頻度、1回の購入単価を目安とした区分(上得意客、常連客、お試し客など)、商品やサービスに関する知識レベル(初心者~上級者)など。
ITが進み、顧客の個別管理、One to Oneが格段に容易になってきたことで、利用の重要性が増えています。特にEコマースサイトや、自社で直接顧客接点を持つ企業様にとっては、大事なセグメンテーション方法の1つです。
デモグラフィックやジオグラフィックなど、事実関係を示すデータは、情報の収集も加工も容易で、リサーチの分野でも、一般的なものと言えます。
特に、日本がマーケティングのお手本としてきた米国では、人種や宗教、世代といった明確なデモグラフィック変数や、南部・北部といった地域特性(ジオグラフィック変数)の違いによる価値観の差を無視できません。
ただし、それだけで十分かと言えば、ちょっと物足りない時がありませんか?
日本で、例えば、「都心在住-30代-女性-独身」といっても、好きな遊びや、ファッションも、外出の頻度も、休日の時間の過ごし方も、SNSの利用状況も、一括りには語れないのと同じこと。
傾向は掴めたとしても、なんとなく、わかったような、わからないような、“ぼやっとした”印象、1人の「人間像」としては、捉えることが難しく、マーケティングの手の打ち方がわかりにくいのです。
だから、生活者を、“価値観”から理解する方法がサイコグラフィックアプローチ。
「生活者可視化調査」は、生活者の個性や好み、価値観、ライフスタイルといった要因から生活者を理解しようとする、コトラーの理論で言うサイコグラフィックアプローチに基づく調査の1つです。
つまり、生活者可視化調査で価値観にフォーカスすることの意義は、
- もっと、“ヒト”であり、“ヒトの思い”にフォーカスしていくこと。
- 「ヒト」を起点にして、市場であり、生活者の理解を深めることで、脳内のアイディア・スイッチを入れるために役立てていくことを目的
としています。
生活者可視化調査とは-.2).
価値観にフォーカスする意味:動く“的”ではなく、本質を掴む(要するに)
欲しい・欲しくないは、動く“的”。動く標的に焦点を当てても成功するのは難しい。
人々を行動に駆り立てる“基本軸”を探す。(Be>Do>Have理論)
- 「欲しい」「欲しくない」にフォーカスを当てるのは、動く的を狙うのと同じ。動く“的”を狙っても、成功するのは難しい。
では、人々の行動に駆り立てる“キモ”とは何でしょうか? - 何が欲しい(所有=Have)は、結局、何がしたい(Do)、何がしたいは、結局、どうありたい(Be)が深層にあります。
価値観にフォーカスを当てるのは、このBe>Do>Haveの関係を理解し、生活者の行動の“キモ≒基本軸”を探ることに繋がります。
もし私が顧客に何がほしいか聞いていたら、 彼らはもっと速い馬がほしいと答えただろう。 -ヘンリーフォード
この話を、「結局、エンドユーザーに話を聴いてもわからない」という文脈で理解されていますか?
当社では、「ニーズの3段階構造(Be>Do>Have)」という考え方で、解釈しています。
Be>Do>Have
つまり、
- 最終消費者は、「もっと速い馬が欲しい」と言っている=”Haveニーズ”。
普通だったら、これで、4頭馬車、8頭馬車を考えて終わりがち。 - しかし、「もっと速い馬が欲しいという“Haveニーズ”」を一歩進めて、「もっと早く目的地に着きたいという“Doニーズ”」に注目、
- 現実は、たとえ、「もっと早く目的地に着きたいという“Doニーズ”」という生活者心理に気づくことができたとしても、それを自社のやり方で達成するためのアイディアの想像力・実現する技術力という面がとても難しい。
- でも、フォードのように、自動車という形に具体化(アイディア化)できたならば、世界は変わる。
これこそ、マーケティングの勝利そのものと言えるでしょう。
本来、生活者が語る「もっと速い馬」の意図は、「もっと早く目的地に着きたい」という、「やりたいこと(Do)」が前提。
生活者とすれば、実はその手段は、4頭馬車であろうと、自動車であろうと、新幹線であろうと、飛行機であろうと、もっと言えば、スカイプやズームであっても、自分のやりたいことが実現さえすれば、本当は構いません。
そして、その「やりたいこと(Do)」をやる際の「手段」を選ぶ決め手に何が影響をしているかと言えば、「合理的でありたい」であったり、「直接顔を合わせるコミュニケーションを大事にしたい」であったり、「どういう自分でありたいか/どういう状況が快・不快か(Be)」といった、価値観そのものです。
つまり、
- 何が「欲しい・欲しくない(何を持ちたいor持ちたくない)(Have)」かは、何を「したいorしたくない(Do)」かによって影響され、
- 何を「したいorしたくない(Do)」は、結局、自分自身が置かれている社会的環境や経済的環境の中で、「どうありたいかorありたくないか(Be)、他人にどう見られたいかorどう見られたくないか(She is cool、hot、etc.といった自己表現価値を含む)」ということによって、影響を受けるということ。
- 消費行動という表層的な「Have」に関するニーズは、結局は、どうしたいか(Do)であり、どうありたいか(Be)といった目的連鎖の深層部に繋がっており、それが表出したものだという捉え方
です。
結局リサーチにおいて、「何が欲しい・何が欲しくない」かを、直接的に聴くことは、フォードがいう“速い馬”のように、“動く的”を追い求めるのと同じこと。
そして、この“動く的(Haveニーズ)”は、掴んだと思っても、すぐに「過去のものになりやすい」という特性があります。
むしろ、大事なのは、
- 「もっと早く目的地に着きたい」といった行動の目的(Do)であり、さらに、
- 「どういう姿が自分の理想なのか/どういう状態が自身にとって快・不快なのか( Be/Feel)」 -いわば、「生活者の隠れた状態であり、感情のゴール」であり、
- ゴールの到達を促す、または、邪魔をする環境の要因を含めた、行動を左右する「本質的な価値観/行動基準」を見つけることにある
と思います。
つまり、結局、生活者の気持ちの中に入って、喜びのポイントなり、その人の考え方の軸、行動を促すまたは、邪魔をしている理由を理解していくことが、他社との違いにつながるアイディアを生みだすTriggerになっていくのではないでしょうか?
生活者可視化調査では、どうありたいか(Be)/どうしたいか(Do)といった情報から、生活者の「価値観を形成している軸」を因子分析などの手法を使って見つけるところから始めます。
生活者可視化調査とは-.3).FACTベースによる生活者像の具体化
脳は退屈がきらい。ただし、Factの裏付けのない人物像は単なる“物語”にすぎない。
数値データに裏打ちされた生活者の人物像化
- 数字は大事だが、数字だけでは退屈。
ストーリーや肉声が感じられる、命を吹き込まれたデータにこそ、人間の脳は刺激される。
だから、生活者可視化調査では、生活者の価値観に軸を置きながら、ペルソナ手法/ストーリー手法を取り入れて、生活者像を可視化。 - ただし、描かれた生活者像は、”Fact“を積み上げた、データドリブン型であるべき。あくまでもデータによって裏付け、構造が明らかなものでなければならない。
- 生活者可視化調査は、因子分析やクラスター分析といった手法を用いた定量調査メニューです。
人にまつわる情報は、社会的な動物である我々にとって、直観的に何が重要かを意識させ、物事を理解させる力があります。
単に、「無駄を省いて重要な事実だけを箇条書き/FACTだけの数字データを示す」よりも、人の心であったり、感情的な側面を含めた人物像の情報の方が、多次元的、立体的に、生活者像の本質に迫ることができると考えます。
人物像化するからこそ、その人物像が行動し始め、アイディアを考える人の頭の中で、マーケットの中で、自分たちがこの人との繋がりや支持を得るためにはどう振る舞えばよいか、この先の筋書きや、担うべき役割を考える手助けとなるはずです。
ただし、ここで描かれる人物像は、常にデータという“FACTベース”でなければ意味がありません。
データの解釈に基づく世界観づくりは、マーケッターのセンスによるところが大きいにしても、その解釈の裏付けとなる構造や、因果関係は、データによって裏付けがなければ意味がないのです。
自分たちで思い描く「ターゲット像」と、データの裏付けのある「ペルソナ手法」は違います。
生活者価値化調査で描かれる生活者像は、
因子分析やクラスター分析といった統計手法に基づくFactを積み上げて、最終的に数値を“解釈”し、数値データの裏付けがきちんとある、数値から描き出された人物像であり、あくまでも、見えやすいように人物像として可視化されたデータの“解釈”の結果
です。
最終的な形が、人物像として集約されるからといって、ストーリーテラーが勝手に話を作っているのとは違います。
相関関係と因果関係を一緒にすると、単に誤解を生むだけです。「直観」や「主義主張」は横において考えましょう。
具体的には、生活者可視化調査でのアウトプット内容は、定量データをもとにペルソナ手法/ストーリー手法を取り入れて、以下の1~4の要素を統合的にとりまとめ、わかりやすく、クラスター人物像として、提示します。
(*調査目的によって、アウトプット形態、使う手法は、当然異なります。詳細はお問合せください。)
【調査アウトプット(分析要素と報告書の内容)】
- 生活者のモノやサービスに対する価値観はもちろんのこと、そうした価値観を持つにいたる環境的、心理的な背景といった生活者の価値観(サイコグラフィック特性)
- その人が、どのような属性なのか、属性モデル(デモグラフィック特性)
- どういうところに住んでおり、どういうところに出没する傾向があるのか?(ジオグラフィック特性)
- 既存の商品やサービスにおいて、どのような購買行動・態度を取りがちなのか?(行動特性)
生活者可視化調査の目的(こんな時に):
大きな社会の変化/事件があった時に
大きな”事件”があった後、人々の生活に対する価値観は大きく変化します。
“昨日の続き”でマーケティングを考える前に、今一度、生活者の価値観の手探りからはじめる場合に。
アフターコロナ。
明日は、今までの続きではなくなり、それが、新しい 「ニューノーマル」。
“昨日の続き”はもはや通じないのはわかっていますが、それでは生活者の価値観は、今、どのような状況にあるのでしょうか?
これからの製品&サービスに対する生活者の向き合い方が変化するであろう中で、生産者やサービス提供者として、大きく変えなければならないことはなんでしょうか?
マーケットが、生活者が変化に揺れる時こそ、今後のマーケティング戦略再構築に向けて、今一度、立ち止まり、冷静に市場を見たいときに生活者可視化調査は有用です。
市場の成長ステージに変化があった時に
市場の成長ステージに変化が起きている時、“今まで”のお客様像と、“新しい”お客様像は、大きく異なります。
でも、何がどう違うのでしょうか?
今までのルールが通じないと感じたら、お客様アプローチに戸惑いを感じたら、定量的に「「市場(生活者)」を見直してみることが大事です。
市場の成長ステージに変化が起きた時に、
たとえば、一部のお客様が利用していた製品&サービスが、キャズムを超えて、一般のお客様にまで広がり始めた時、今までの「お客様像」のままでは、ターゲット戦略を見誤ります。
また、「ヘビーユーザー」だけでは行き詰まりを感じ、ライトユーザーを深堀りしたい場合、どのように戦略&戦術の方向チェンジをしていけば良いのでしょうか?
お客様像は一括りで語ることは難しいです。特に、今までのルールが通じないと感じた時、違うお客様像にチャレンジする場合は、新しい視点での顧客理解が不可欠です。
ターゲット戦略を考える上で、市場を俯瞰&包括的に見る必要がある場合に、生活者可視化調査は有用です。
性別、年齢、職業、国といった属性だけで生活者を見てもよくわからないと感じた時に
Generation X,Y,Z,ゆとり世代、ロスジェネ世代、バブル世代、シニア世代、などなど。
確かに世代の違いはあるけれど、同じ世代の中でも様々な価値観を持つ方が混在しているのは自明なこと。
性別、年齢、世代などの属性で、一括りにするには乱暴すぎませんか?
生活者を理解するために、“価値観”からアプローチ
生活者可視化調査では、生活者を「価値観」で定義し、生活者理解を深め、マーケティングヒントを得ていきます。
性別、年齢、職業の属性プロフィールの他、様々なクロス集計で工夫を凝らす有用性はもちろん認めていますが、それだけでは物足りない場合があるのも事実です。
同じ世代といっても、一人ひとりの個人史、現在の生活環境が異なるのですから、価値観も異なって当然です。
生活者可視化調査は、日本市場はもちろん、海外に展開する場合など、よりきめ細かに市場を見たい時のマーケティング方法の1つです。
生活者可視化調査の調査分析アプローチ方法:
因子分析:「価値観」を形成している軸を見つける
異なる特性を持つ生活者を分類をしていく上での”軸(因子=Factor)”の発見
生活者の価値観やライフスタイルを理解する際によく使われる手法です。
数多い設問項目の中から、関係性の強い項目を統計的に見出し、潜在する次元(因子)を発見します。
クラスター分析で、多様で異なる価値観をを持つ生活者を分類する際に、その前段階として、類似性を取りまとめていくための軸を抽出します。
KFSで、よく行うやり方としては、
- 1.実査
定量調査:価値観に関する意見項目などの生活者の尺度データの入手 - 2.因子の個数の推定
設問項目をくくる際、「いくつの数の因子」でくくるのが最適なのかを推定(スクリープロット+累積固有値を利用) - 3.因子負荷量の算出
因子軸の回転方法は、バリマックス回転、プロマックス回転など。
ケースbyケースですが、KFSでは、プロマックス回転を利用するケースが多いです。
- 4.因子の数と”くくり方”を検討
各因子における因子負荷量のデータをもとに、数多い設問項目をどのように要約していくのか、因子の”くくり方”を検討。
推定された因子の数に基づき、検討。因子の数を少なくする場合、増やす場合、など。
因子負荷量をもとに各因子をくくった場合、どのような小項目が入るのか、統計値をもとに、因子をいくつに分解するのかが適切なのかを考察。 - 5.因子の解釈とネーミング化
各因子において、絶対値の大きい項目をベースに、小項目までをカバーできる”共通項(潜在する次元)”は何かを考察=因子の解釈。
各因子の解釈のもと、各因子事に、その因子をネーミング化
というステップを踏みます。
言ってみれば、生活者の価値観や考え方を軸に、細かな設問小項目の中から、”共通する軸を発見”して、中項目に括り直す・要約していくというステップです。
質問項目で作成した「大項目-中項目-小項目」は、調査設計段階で考えたものですが、この因子分析のステップを通じて、回答者の回答傾向から、調査前には思わなかった設問項目間の”繋がり(まとまり)”や、”設問間の繋がりの強弱(共通性がどのくらいあるか)”が見えてきます。
クラスター分析:多種多様な生活者の“まとまり”を見つける
異なる価値観を持つ人物の集まりである生活者を、回答傾向により、いくつのパターンに分かれ、どう類型化できるかを明らかにしていく
クラスター分析とは、ターゲットセグメンテーションにおける有効な分析手法として使われる手法の一つです。
異なる価値観をもち、多様性あるサンプル(回答者/生活者)を、類似性の指標をもとに、似たような傾向を持つ人々を取りまとめ、クラスター(集団)としてグループ分けしていきます。
クラスターとは、英語で「房」「集団」「群れ」のことで、ぶどうの房のように似たものがたくさん集まっている様子を表します。
ネットスラングで使われる「●●クラスタ」という言葉に馴染みのある方もいるでしょう。
KFSで生活者可視化の調査を実施する際は、市場にいくつの価値観を共有する生活者グループがあるのかといった情報がゼロの段階からスタートし、上記の因子分析を用いて、似た者同士を階層的にまとめていく手法を取る事が多いです(階層型-Ward法)。
具体的なステップとしては、
- 1.回答者ごとの因子の持ち方(因子得点)を算出
上述の因子のパターンを、個人別にどのように持っているか、因子得点を計算。クラスター分析の元とする。 - 2.それぞれの因子の持ち方に基づき、似た者同士をまとめていくと、いくつの「まとまり(房=クラスター)になるかを樹形図をもとに検討/決定
階層型-Ward法。似た者同士を統合して、いくつかのクラスターにまとめていく。
樹形図をもとに、因子の持ち方のパターンで、いくつのパターンに分類していくかが最適なのかを見ていく。
- 3.各クラスターごとの特性分析
各クラスターごとの因子得点の算出+クラスター別にクロス集計・分析。
クラスターごとの詳細な、生活者プロフィールや、基本的な価値観、行動基準などを定量的に分析
さらに、市場理解・生活者理解を深めたい場合には、
- 4.クラスターの肉付け(定量インサイト手法などとの組み合わせ)
各クラスターの数値データをより肉付けしたり、分析に深みを出したい場合には、定性的な要素を付加。
肉付けを行うために、文章完成法などの定量インサイト系の設問を組み合わせたり、別途、インタビューなどの定性調査を組み合わせる。 - 5.ペルソナ化(ペルソナ手法の活用・顧客像のモデル化)
簡易的に、全クラスターをペルソナ化する場合や、ターゲット候補とすべき特定クラスターを重点的に掘り下げてペルソナ化する場合など。調査目的に応じて。
というやり方を付加します。
これにより、生活者の価値観や考え方を軸に、
- 市場の全体像を俯瞰
(市場の構成図。市場は、どういった価値観を持ついくつのタイプの”生活者のまとまり≒房/クラスター”に分類することができるのか?それぞれのクラスターの市場構成比)
と合わせて、
- 各クラスターの生活者像
(どのような顧客プロフィールで、どういう価値基準を持ち、どのような行動を取ることが推測されるのか)
といったことを明らかにしていきます。
参考)クラスター分析に用いる一般的な手法
クラスター分析に用いる分析手法としては、以下に挙げる2つの手法に大別されます。
どちらの手法が良い・悪いではなく、分析対象とするサンプルサイズなどの要件等をもとに使いこなすことが肝要です。
階層型
階層クラスター分析とは、似ている組み合わせを一まとめにしていきながら、順番にまとまり(クラスター)にしていく方法です。
最終的に「樹形図(デンドログラム)」と呼ばれる階層型のチャート図ができあがります。
樹形図を用いると、分類の過程のプロセス(どのように、クラスターが結合されていくか)を確認することができるため、クラスター間の繋がりや、分岐が理解しやすいことが特徴です。
また、非階層型クラスター分析においては、あらかじめクラスター数をいくつに分けるのかを決める必要があるのですが、階層型の場合は、いくつのクラスターに分けられるか、ゼロベースで検討することがきることもメリットだと思います。
手法としては、最近隣法、最遠隣法、群平均法、重心法、メディアン法、ウォード法などがあります。
KFSでは、階層型クラスター分析-ウォード法の手法を取ることが多いです。
非階層型
集団全体から出発して、似た者同士が同じクラスターに入るように集団分割していく方法です。
手法としては、最適化法(K平均法)がメジャーな方法と言えるでしょう。
階層クラスター分析と異なり、あらかじめ、5つ、6つ、7つなど、クラスターの数をK個として指定する必要があり、決めた数の塊にサンプルを分割していきます。
ビッグデータなど、大規模サンプルを分析する場合は、非階層型の方が適していると言われています。